ECOだより





ゲノム編集食品の流通が始まります。
ほぼ確実に、ピンポイントで「狙って」変異を作り出す

ゲノム編集とは「DNA(遺伝子)切断酵素」を使って動植物の遺伝子を
壊したり置き換えたりする技術です。
2013年にDNA切断酵素として「CRISPR(クリスパー)/Cas(キャス)9」が
開発され応用分野が拡大し世界中に広まりました。
日本でもゲノム編集技術を使った食品の「届出制度」が2019年10月から
始まり、下記に記載するゲノム編集食品の開発が進められています。


ゲノム編集食品例
血圧を下げる効果のあるトマト「血圧を下げる効果のあるトマト」
GABA(血圧を抑制する成分)を5〜6倍多く含むトマト。

「芽が出ても毒のないジャガイモ」
芽が出ても毒のないジャガイモジャガイモの芽や緑色の部分には天然毒素が含まれていますが、ゲノム編集により毒素を作る遺伝子を切断すると、毒素を作らなくなります。

筋肉量を増やした真鯛 「筋肉量を増やした真鯛」
ミオスタチンという物質は筋肉細胞の増加や成長を止める役割を果たしており、この物質を作る遺伝子の働きをゲノム編集で変異(機能喪失)させると筋肉量が増えます。

おとなしいマグロ 「おとなしいマグロ」
マグロは光に驚いてパニックとなり生け簀の網に猛スピードでぶつかり死んでしまう個体が少なくありません。おとなしい個体は目の色素が薄いため光に鈍く自然界では淘汰されますが、養殖の場合は成長させることができます。
とはいえ、目の色素が薄いマグロを探し改良して新種に仕上げるのは容易ではありませんが、ゲノム編集で変異させれば養殖に適した品種となり生産性を向上させることができます。

養殖しやすいサバ 「養殖しやすいサバ」
サバは強い攻撃性を持っており稚魚の段階で共食いをしてしまうため、養殖をしても生存率は1割となります。ゲノム編集にて受精卵の内部の攻撃性を発動する遺伝子を切断すると攻撃性が抑えられ共食いしにくい品種になります。
「アレルゲンが少ない卵」
アレルゲンが少ない卵
「結実量の多い稲」 結実量の多い稲


アメリカでは日本以上にゲノム編集食品の開発が進んでおり既にゲノム編集大豆が大量生産され、大豆から摂れる食用油は身体に良いとされるオレイン酸を多く含み酸化が抑えられ通常より3倍長持ちするとの広告で販売されています。但し、ゲノム編集食品である記載はありません。

今後日本にも輸入が進むものと予想されています。


ゲノム編集技術 は動植物自身の遺伝子を切断または改変を自在に操り品種改良をおこなう新しいバイオテクノロジーとされています。従来の遺伝子組換え技術と同様に切断したところに別の作物の遺伝子を組込むことも可能ですが、ゲノム編集技術はその生物自体の遺伝子を単に切断して特定の遺伝子の働きを止めることで品種改良を促進することを可能にした点にその特徴があります。

ゲノム編集の代表的な技術は遺伝子を切断する機能を持たせたハサミ役の酵素(Cas9)と、その酵素を特定のDNA配列(遺伝子配列)まで連れて行くように設計したガイド役の物質(ガイドRNA)をセットにして細胞の中に導入し狙った箇所の遺伝子を切断できることです。


切断された 遺伝子を細胞は自ら修復しようとしますが、間違って元の配列とは違うDNA配列になると切断された遺伝子機能が喪失し、変異が生まれます。

狙った場所で変異を起こすことができるため、従来の育種方法や遺伝子組換え技術に比べて格段に効率的な品種改良や育種が可能となります。

ゲノム編集でも遺伝子の切断と同時に他生物の遺伝子を組込めば遺伝子組換えとなります。

この手法だとこれまでの遺伝子組換えよりも数千倍も効率的な組換えが可能となります。


ゲノムとは・・・ 全ての生物の細胞の中にはDNA(デオキシリボ核酸)という物質があり、DNAは(A:アデニン T:チミン G:グアニン C:シトシン)4つの塩基物質が2重らせん構造でつながり配列されてできています。

このDNAの全ての情報をゲノム(生物の全遺伝情報)といいます。ゲノムの中でも生物の性質を決める部分を遺伝子と呼びます。



生物の性質 を決定するのは遺伝子ですが、実際に働くのはタンパク質です。DNAの配列でタンパク質の性質が決まるため、DNA配列(遺伝子配列)が変わるとタンパク質の性質が変化し生物の性質も変わります。

DNA配列が変わることは突然変異と呼ばれ育種において重要な役割を果たしてきました。

突然変異は自然界でも起きますが、放射線照射や化学薬剤の投与により人工的に遺伝子を切断して変異を起こすこともできます。生物は切断された遺伝子を修復する仕組みを持っていますが、修復に失敗するとDNA配列が変わって突然変異が起こります。





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