広いキャベツ畑でキャベツを虫食いにしているコナガの幼虫を探すのは容易ではありませんが、寄生蜂のコナガコマユバチは簡単に幼虫を見つけて寄生します。
コナガの幼虫に食べられたキャベツが天敵の寄生蜂(コナガコマユバチ)にSOS信号を送っており、寄生蜂はこの信号をたどって幼虫の居場所を突き止めます。
食害や傷に応じて植物が放つ信号の正体は「みどりの香り」と呼ばれる揮発性の化学物質『フィトンチッド』です。
キャベツは賢く、付いた虫によって信号を使い分けそれぞれの天敵となる蜂を呼び寄せることができます。信号の化学物質『フィトンチッド』は複数の成分からできており、植物は虫の種類によってブレンドの仕方を変え天敵だけではなく周りの植物(仲間)にも危険を伝えます。
虫に食べられた植物を同じ植物の近くに置くと、無傷の植物は虫に食べられた植物が放つ信号をキャッチして自己防衛の態勢に入ります。こうした信号が野外では約10m作用することが確認され、同じようにリママメやトウモロコシなど、いろいろな植物がSOS信号を出すことがすでに確認されています。
危険察知、回避の香りのコミュニケーションは植物どうしの種の保存機能です。このような仕組みをうまく利用すれば農薬に頼らずに植物を虫の害から守ることができるようになります。虫の害から身を守る以外にも、根から出る信号には領分を守り、競争相手を追い出したり、助けを呼んだり、立ち聞きをしたり、信号となる化学物質『フィトンチッド』を使ったコミュニケーションを植物はおこなっているのです。 |