ECOだより





日本の畑作物からは国際順を超える数値
食品中のカドミウム摂取制限があるのはお米だけ
米の安全基準の背景
1970年7月、厚生省の微量金属調査研究会の「1ppm未満の玄米(精白米は0.9ppm)は人体に有害であるとは判断できない」との見解から、同年10月、食品衛生法に基づき玄米1ppmの基準値が設定されました。

一方農林省は1970年7月、カドミウム環境汚染要観察地域の産米の配給基準は、0.4ppm以上1ppm未満の玄米を配給しても食品衛生上差し支えないが消費者の不安を考慮して配給しない決定をしました。

1955年8月、富山新聞に初めて「イタイイタイ病」が報じられ、1968年5月、厚生省がイタイイタイ病はカドミウムが原因と断定され、これによって政府が公害病第1号として認定し、その2年後に米の安全基準が設定されたのです。

畑作物は2007年に初めてカドミウムの土壌調査がされたばかりで安全基準がありません。

食品中のカドミウム摂取制限はお米だけ。近年、米の消費量が半減・・・ご飯を食べなくなったから安全? 米の安全基準と消費量を摂取実数として、一般的な日本人に食品から摂るカドミウムが健康に及ぼす影響は少ないと判断されています。

食品からのカドミウム摂取の経過年


安全基準のない日本の畑作物は大きな問題です
米からのカドミウム摂取が基準とされていますが、現在、わが国では減反政策、米の消費減少、食糧自給率向上の目的から水田を畑に転換して大豆や小麦、野菜等を作付けする動きが広がっています。地域の土質、土壌酸化状態によってカドミウムの土中濃度は異なりますが、畑作の場合、土中のカドミウム濃度が高いと作物に吸収されやすくなるため、大豆や小麦、野菜などのカドミウム含有量にも注意が必要になります。肥料などの資材に関する問題は科学的裏付けデータがあるのになかなか表面化しておりません。

※肥料では、リン酸基補給肥料の一部。農薬ではMO剤と呼ばれる除草剤等。


国際食品規格(コーデックス案)との差をどうするか
農水省が行った作物調査は、カドミウムの数値が高いであろう過去の汚染田や土壌改良され線引きされた地域の畑や水田を畑に転換し何の対策もとられず農作物を作っている場所を外して調査報告するなど、「日本という国は科学的な基準作りを怠る国」という評価を広めています。

小麦、大豆、ホウレン草、里芋、ごぼう、オクラなどいくつかの作物が高い数値を示したり、全体的に含有量が多い作物があり、早急に畑作物の実態調査と対策を急がねばなりません。

WHO/FAOコーデックス委員会ではカドミウム国際規格を設定しています。畑作物のカドミウム残留基準を国際規格に適合させると、日本の農業事業への影響が大きいため各省庁は安全基準作りに積極的ではありません。お米にしか基準がない日本人のカドミウム摂取量は1日平均約21.1μgとされていますが、ヨーロッパでは10μg以下という所もあります。
μg(マイクロぐラム)は、1グラムの百万分の1の重さ
食の出発点は生産段階です。一部の農家の人たちは畑作物のカドミウム対策を個人的に取組み安全な食づくりをされていますが、今回のカドミウムの安全基準設定が見送られた事態は「食の安全」に対する行政姿勢を象徴するものです。 

私たちが口にする食物の多くが水分を含んでいます。「水」によって、毎日の食にエネルギーを与えることができれば、目に見えないところで「食」の問題をケアすることになります。

コーデックス委員会
消費者の健康保護、食品の公正な取引の確保等を目的として、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)により設置された国際的な政府間組織。国際食品規格(コーデック規格)の作成等を行う。


世界有数のカドミウム消費国、日本! 知ってましたか?

日本はかつてカドミウムの生産国であり、1970年〜1980年代前半には生産量の半分を輸出していました。カドミウムはメッキや電極、電気器具、半導体などに使用されていますが、携帯電話など充電式の小型通信機器、電気機器の登場でニッカド電池(充電池)の需要が高まり80年代後半には輸入が急増し生産量をはるかに超える量が輸入されるようになりました。その多くがニッカド電池に使われ今や世界有数のカドミウム消費国です。現在ではニッケル水素電池やアルカリ電池がシェアを拡大していますが、まだまだ使い安さから日常で使用されています。

電池は分別回収されずゴミとして焼却されたり、地中に埋められてカドミウムが環境中に排出され空気や土、水を汚染する状況となるのでゴミ分別の全国統一性が必要です。