ECOだより





食糧不足危機の裏側で:クローン技術ってなんですか?

クローン技術はパンドラの箱を開ける?
クローン技術とは哺乳類などをオス、メスの交わり無しに繁殖させ、親と全く同じ遺伝子特徴を持つ子を人工的にたくさん生ませる技術で、遺伝的に全く同じ生命体(群)をクローンと呼びます。

有性生殖 人間を含む哺乳類の子は両親のそれぞれから遺伝的な特徴を受け継ぎ同じ親から生まれた子同士であっても異なった遺伝的特徴を持ち、また親と子でも持っている遺伝的特徴が異なります。

無性生殖 単細胞生物(アメーバ)は親が分裂して2固体の子ができます。細胞分裂により固体を増殖してオスやメスの区別なく子孫を残します。無性的に生まれた固体は突然変異が起こらない限り「親」と「子」は遺伝的に全く同じです。

●受精卵クローン 1個の受精卵を人工的に利用して生ませる。
@ 精子と卵子が合わさってできた受精卵は細胞分裂して成長し始めます。その分裂した細胞から核を抜き取ります。
A 別の未受精卵の核を除きます。
B @で抜き取った核をAの核のない未受精卵に埋め込み、電気的な刺激や化学的な刺激を与えて、受精したと同じ状態にします。
C Bの人工的受精卵の細胞(胚)分裂が始まった後、子宮内に入れ妊娠したのと同じ状態にし、無事生まれると受精卵クローンの誕生です。

●体細胞クローン 成体の体細胞(皮膚など)を利用して生ませる。
@ 成体の体細胞(例えば皮膚や筋肉など)から核を抜き取ります。
A 未受精卵の核を除きます。
B @で抜き取った核をAの核のない未受精卵に埋め込み、電気的な刺激や化学的な刺激を与えて、受精したと同じ状態にします。
C Bの人工的受精卵の細胞(胚)分裂が始まった後、子宮内に入れ妊娠したのと同じ状態にし、無事生まれると体細胞クローンの誕生です。

クローン臓器にクローン人間?
健康と長寿、不老不死は古代より人類の永遠のテーマであると言っても過言ではありません。自分と全く同じ遺伝子の臓器があれば移植は簡単になります。そして病気の治療や不妊治療にも生かすことができます。しかしクローン技術の応用は人類の掟として悪用されないための国際規約と高い倫理観が必要とされる難しい問題を抱えた技術です。

クローン牛はセレブ種?
乳牛であればたくさんお乳がでる乳牛を、食用肉であれば高級ブランド牛が確実に生まれてきます。優秀な親と全く同じ遺伝子情報を持った子がたくさん同時に産出され、未来に残すことも可能です。業界としては同質の牛や豚ばかりだと管理も簡単で利益を生み市場操作もできます。しかし、同じ遺伝子を持つ牛や豚が同じ場所にいることは同じ欠点を持ち、同じ病気にかかりやすく一気に全滅したり、大量の病原菌を培養するなどの危険をともないます。
人口増加による食糧危機に備えてできる限りのテクノロジーで対応する試みと、医療への貢献も期待されていますが、どちらにしても充分な安全性の検証と偽装行為を抑止できる表示法等の整備が必要です。

クローン牛は食べれますか?
食べれます。ただ倫理観の問題と、クローンがどんなものか知らないで食べろと言われても怖くて食べれません。どんな害があるか分らないのに・・・・では理解していたら食べれる? 心情的に、食べる気になれないですよね。
体細胞クローン牛は生まれた直後の死亡率が高いことや老化現象が早期に生じるなど生態系のバランスを含めて安全性が問題視されていますが、内閣府食品安全委員会は生後6ヶ月を超えると従来の牛や豚と差異はないとの判断で安全性を認める方針です。

なぜ早々と国は安全データを出したがる!?
クローン牛が安全だと言われても専門知識のない私たちは不安を拭えません。安全と安心は別物です。国内では過去557頭のクローン牛が産出され(2008年12月時点で生存は72頭)研究開発が進められていますが、これほどの少ない症例で安全とするのでしょうか。狂牛病騒動を覚えていますか?安全宣言され輸入解禁になったアメリカ牛肉は、いまだに危険部位が混入した肉が検査に引っ掛かり問題になっています。

※写真、イラストはイメージです。